公費解体

概要

家屋の「全壊」とは、本来の機能を持たない家屋とみなされたということ。
家屋の役割を果たせない=家屋ではないとも考えられる。
つまり、災害によってその機能を果たすことができないもの=災害廃棄物、とも考えられる。
この場合持ち主が申告をすれば、災害廃棄物として公費での撤去の補助対象になりえる。

公費での解体では、自治体が工事の発注から実施や支払いまでをすることになる。
持ち主に金銭負担は一切ないものの、解体時期などを住民自身が決められない。

一方、自費解体と呼ばれる仕組みも存在する。
これは、業者選定から支払いまでを自分で行い、かかった費用の還付を求めるというもの。
仕組みが適用される期間内であれば好きなタイミングで解体ができるが、一旦費用負担をする必要がある。また、経費が公費解体の基準金額を上回る場合は、それが自己負担金となってしまうという点もある。

対象世帯

基本的には、全壊の家屋などが対象になる。

しかし東日本大震災や熊本地震規模の災害では半壊以上が対象となる場合があった。

また、都道府県や市町村などが独自予算を組み、大規模半壊や半壊を対象とすることもある。

対象建物

公費解体の対象となるのは、個人の住家や中小企業の所有建物などがある。

しかし具体的な対象範囲は自治体の運用によって差がある。

例えば、以下のようなポイントが課題となる。

  • 公費解体の対象となった家屋の中身(土砂や家財)も対象に含まれるか
  • 敷地内の家屋と一体になった倉庫や、独立した離れ、蔵、庭木なども対象となるか
  • 特定の建物だけを残した一部解体はできるか

こうしたポイントが柔軟に対応されると、その後の課題を圧縮することができる。

実施スケジュール

公費解体は、それを希望し対象となる世帯ごとの申請が必要なものであるが、自宅を解体するかリフォームするかは、とても大きな決断である。

多くは自宅の申請受付から1年ほどで締め切り期限とされる。

しかし、自宅再建について悩む住民感情に寄り添い、延長になった場合も多い。

また、実際の解体作業についても大幅にスケジュールの後ろ倒しが起きることがある。

業者の選定、申請書受理までの住民と窓口でのやり取り、それぞれの解体にあたっての立ち会いなど、当初の想定よりも時間を要するポイントが多い。

課題

公費解体と聞くと、自宅解体に費用負担がなくお得な感じも受ける。

被災者生活再建支援法などでも、解体して再建したほうが受け取れる金額も高くなる。

ただ、前述の通りに当初のスケジュール通りには進まないことが多く、災害による建築資材の高騰も起こりやすい。

結果として、解体前の見積もりよりも自宅再建が高くなってしまい、壊したものの建てられないなどとなる可能性もある。

公費解体の他に、応急修理制度の周知など別の選択肢の提示も進める必要がある。

参考

災害関係業務事務処理マニュアル

災害廃棄物対策情報サイト:関連法及び計画、指針、ガイドライン等

被災建物の公費による解体撤去と事務について

 阪神・淡路大震災教訓情報資料集【01】公費負担での解体撤去・受付