車中泊避難

概要

車中で避難生活を続けること。

避難所の駐車場や公共施設の駐車場、道の駅や自宅の前など、さまざまな場所で駐車して避難することができる。

避難所などのオープンな場所に比べて、車中という限られた空間のため運動量が低下してしまったり長時間同じ体勢をとってしまうため、いわゆるエコノミークラス症候群になりやすい。

しかし、車中という区切られた空間のため、プライバシーは避難所の中よりも守られる。

課題1

熊本地震の際は、震度7の揺れが2度来たこともあり、余震への不安が大きかった。

実際に2度目の揺れで施設の天井が落ちてしまった避難所もあり、建物の中よりも車中の方が安心だという声が大きく、車中泊避難者が相当数生まれた。

避難者の7割は車中泊を経験したというデータもある。

しかし、これによって多数の避難者がエコノミークラス症候群を発症。

熊本地震の犠牲者は250人以上にのぼるが、そのうちの200人は関連死である。

更にその200人のうち、3割に当たる59人が車中泊を経験していたとのデータもある。

参考:関連死3割が車中泊 「健康確認、態勢確立を」

課題2

避難者の実態把握が難しいのも大きな課題である。

外から見るだけでは、どの市町村から来た車なのか、車中には何人いて避難者は何人なのかが不明である。

また、避難スペースである車ごと移動ができるため、日中は避難スペースにいない車も多かった。

日毎に駐車する場所が変わる場合や、荷物の一部を置いて駐車スペースの場所取りをする傾向もある。

また、少し落ち着いてくると関係者や支援者なども出入りするため、旅の人が避難者かを特定することが困難になる。

こうした車中泊避難の特性から、避難者の実態把握が難しい。

日中だけでは実態が把握できないため、夜間にかけて車中泊している車を訪ねて、支援物資や支援情報を提供する支援団体もあった。

課題3

避難所の駐車場や車中泊の避難所と広く認知されている場所では、炊き出しや物資配布などの支援を受けられる可能性が高い。

そうではない場合は、なかなか物資支援や情報が届かないことがある。

食事が偏ってしまったり、医療支援につながらず健康状態の悪化に気が付きにくいなどの課題がある。

事例

益城町にあるグランメッセ熊本では、2度目の震度7で建物自体が損傷。

自然発生的に車中泊避難が増え、最終的には車中泊避難者のためのスペースとなった。

広大な駐車スペースを活用し、仮設トイレや物資テント、給水車や炊き出しスペースなどが設置された。

一時は2,200台ある駐車スペースが避難者の車で満杯になった。

長期的な車中泊避難は心身への負担が大きいことから、グランメッセの避難所を運営する行政やそれを支援するNPOなどが、近隣の避難所への移動を進めていったが、避難所としての運営は8月まで続いた。

参考

指定緊急避難場所の指定 に関する手引き

指定緊急避難場所・指定避難所の違い