災害廃棄物

概要

災害廃棄物とは、環境省により以下のように定義されている。

自然災害に直接起因して発生する廃棄物のうち、生活環境保全上の支障へ対処するため、市区町村等がその処理を実施するもの。

その中でも、被災した自宅を片付ける際に出てくる片付けごみと、損壊家屋の撤去(公費解体を含む)などで出てくる廃棄物とに分けられる。

被災現場での活動では被災住民への配慮から、片付けごみも「災害ゴミ」とは呼ばずに「災害廃棄物」と称することも多い。

避難所から出されるゴミは災害廃棄物に該当しないが、仮設トイレの汲み取りし尿と災害に伴って便槽に流入した汚水は災害廃棄物に該当する。

この項目では、個人の敷地内で発生した災害廃棄物(=環境省管轄)について取り扱う。

同じく災害によって発生した廃棄物であっても、別の敷地から流れ込んできた物や、農地に流れ着いた物(漂流物)については、担当省庁が違う場合がある。

詳しくは漂流物を参照。

分類

通常の廃棄物や家庭ごみは、市町村ごとに分類方法が細かく決められ、定期的に回収される。

しかし災害後は、一度に大量の多種類の廃棄物が発生するため、通常の分類では対応しきれないことがほとんどである。

このため、担当の環境省では、以下のような12分類などを提案している。

写真:環境省資料より

実際に処分場や仮置き場などでの分類は、各市町村が設定する。

できるだけ本来の分類に近い、細かい分類であればあるだけ、仮置き場や各処分場での手間や人手が省ける。

このため直後から分類をしっかりできている方が、最終的な処分費用も安く抑えられる。

課題

二次被害

廃棄物が一度置かれると、撤去までに一定の期間が必要になる。

搬出までに時間がかかるとその分、腐敗などによる異臭トラブルや、火災発生の原因にもなりうる。

勝手仮置場

分類が細かすぎたり、仮置場までの運搬が円滑に進まなかったりすると、住民が空き地などに勝手に仮置場を作り、分類されないままの廃棄物の山が発生することにつながる。

西日本豪雨(2018)、台風19号(2019)など、大規模災害では、行政が想定する以上の廃棄物が発生した結果、こうした勝手仮置場が発生し大きな課題となった。

仮置場の復旧

仮置場として、地域の公園や公共スペースが選ばれることが多い。

色々なものが持ち込まれる仮置場は、衛生的面での不安や、ガラス片などの細かな物が残ってしまい地面の入れ替えなどが必要になる。

このため廃棄物が撤去されてからも整備に時間がかかり、長期間子どもたちの遊ぶスペースや、地域の憩いの場が失われることが多い。

できるだけ早い段階で、表土のはぎ取りと土入れ整地の約束を行政と取り付け、空き地などの私有地の活用を模索する必要がある。

過去の事例

三者連携

近年の大規模災害では、行政の想定を遥かに越える災害廃棄物が発生している。

そのため、行政単体では解決できないことも多い。

西日本豪雨(2018)の岡山県倉敷市や、台風19号の長野市(2019)などでは、廃棄物の撤去に自衛隊も協力している。

特に長野市では、「ONE NAGANO」というプロジェクトが実行された。

被災地域の各地に自然発生した勝手仮置場のうち、最も大きい2つを市が仮置場と認定。

日中はボランティアとNPOなどが協力し、勝手仮置場から仮置場へ分類しながら運搬。

自衛隊が夜間に一次集積所へ運搬し、仮置き場での受け入れ体制を整えた。

環境省、災害廃棄物対策指針・参考資料
環境省、災害廃棄物対策指針・参考資料
環境省、災害廃棄物対策指針・参考資料